日本精神分析 柄谷行人著を「今更」読んで何が面白いのか?

今回の書評コーナーは『日本精神分析』(柄谷行人著)です。

柄谷行人と言えば70年代のニューアカやその後のNAMまでが一区切りかもしれません。NAM後は何と言うかその評価も失墜したような気がしますね。いろいろあったんで・笑。

…ただ今のとても若い人で柄谷行人をまともに知っている人はほぼいないでしょう。

「サヨクがウンタラカンタラ~」とかいう世の中ですしね。

そういうことで?「今更」ながら柄谷行人の『日本精神分析』を読みました。

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日本精神分析を「今更」読んで何が面白いのか?

『日本精神分析』に関わらず柄谷本を読んで面白いのは柄谷の日本論だと思います。

『日本精神分析』を今更読んで面白いのは、柄谷行人が今はほとんど日本(文学)自体については論じる気がないがこの本では触れている点だと思います。

柄谷行人の文芸評論家的な視点は面白い

正直言って今の柄谷行人のマルクスカント的な視点による体系的な話に付いて行けている人は余りいないと思います。あれがスゴイ面白いと感じる感性の人も少ないでしょう。

私個人としても柄谷行人はむしろ文芸評論家としての文章の方が面白いです。

例えば日本精神分析の第三章 入れ札と籤引き(くじびき)では菊池寛(直木賞と芥川賞を作った人です)に関する話をしています。

柄谷行人自身は日本の文学について触れるのを現在では嫌がっていて、「話の成り行きで触れないわけにはいかない」とわざわざ前置きして菊池寛について話をしています。

※柄谷行人はずっと以前に文芸評論家を辞めていて文学論など今更、話したくないようです

しかし日本史や日本の文学者、選挙の話に疎い私にとっては逆に興味深い内容でした。

何より新鮮というか、柄谷行人による日本に関わる話は面白いです。彼の見方が妥当なのかは分かりませんが、柄谷行人の文芸評論的な話は面白いということです。

芥川龍之介、谷崎潤一郎…

その他にも芥川龍之介、谷崎潤一郎など有名な小説家の話から始まってまた例の交換様式みたいな話にもなっていくのですが、柄谷の日本的な話はいずれも面白いなと思えます。

やはりカントとかマルクスとか交換様式とかいう例の抽象的というか体系的な話はどうかなって思ったりします。

柄谷行人が一番光るのは文芸評論的な文章じゃないのかなと言えます。ただ繰り返しになりますが本人はそれは嫌がるし、そういった話は今後も積極的になされることはないでしょう。

そういう意味でNAM後の柄谷にしては珍しい本です。

まとめとして

この『日本精神分析』は暇な人が読む本です。

別に何かに役に立つノウハウ本の類ではありません。

カテゴリーも不明で精神分析の本でもありませんし、文芸評論でもありません。

やはり柄谷ファン向けな本でしょう。

おすすめ度…★★★(5点満点)